可愛い子には旅をさせよ!映画『FLY!/フライ!』に描かれる「子育てで大切なこと」

コラム

2024.03.12

「可愛い子には旅をさせよ」という言葉が昔からあります。これは子どもに様々な経験をさせることで、良い成長を遂げるという意味です。そんな言葉が浮かんでくる映画が、イルミネーション・エンターテインメントの新作『FLY!/フライ!』です。ちなみにこのスタジオは、『ミニオンズ』(2015)、『ペット』(2016)、『SING/シング』(2016)を生み出してきたところなので、子どもが楽しめる仕掛けがいっぱい映画にも詰まっているんです。

家族で旅するアドベンチャー映画

まず、物語の主人公はカモの一家で、渡り鳥なのに、住んでいる池から一度も出たことがない“渡り経験ゼロ”の家族!その理由はお父さんのマックが極度の心配性で、子どもに危険があっては大変だと、安心安全な池での暮らしで満足しているから。だけど息子のダックスは、池にやってきた渡り鳥との会話で、ムクムクと冒険心が生まれ、お父さんに哀願。お母さんのパムやダンおじさんの言動から重い腰を上げて、みんなでいざ、ジャマイカへ!!!でもそう簡単に着いたら物語として成立しないので、NYを始め、色んな場所へ立ち寄ることになります。

心配性の大人の問題点

注目すべき点は、お父さんカモのマック。自分の子どもに事故があったら大変と、色々と妄想を膨らませてしまうので、面倒なことは自分がやってしまう性格。となればダックスは旅をしてもいつも安全圏にいて、自分が旅をしている気持ちにもなれないし、いざ助けが必要なほど大変な時に親に手を出してはいけないと言われると、自己肯定感はどんどん低くなってしまいます。大事なのは、親がある程度のところで子離れすること。まずは「やらせてみる」ことの大事さを映画は伝えているのです。

社会生活とは他者との関わり

それだけでなく、“社会に出ることとは、他者との関わりも重要になってくる”ことを映画で描いていて、一度衝突してしまったハト達とどうやって心を通わせるのかを母親であるパムの交渉術から知ったり、ジャマイカ出身のオウムのデルロイから話を聞くことで世界の広さを知るのです。さらにはアヒル達との出会いで人を観る力を学ぶダックスと妹のグウェン。様々な失敗や危険を乗り越え、人との交流で人間としても成長していくことを鳥の世界を通して伝える『FLY!/フライ!』。

3DCGアニメで浮遊体験を

更に3DCGによる技術で、鳥のように空を飛んでいるような感覚を味わえ、華やかなNYの街に行ってみたい、南国ジャマイカでカラフルな鳥達と出会いたいという思いに駆られる映像体験が楽しめます。しかも絶妙な間や可笑しなシチュエーションだったり、コントみたいな展開が笑いを生み、グウェンの可愛さにヤラレテしまう演出の数々は流石のイルミネーションです!

日本語声優陣も豪華で、お父さんのマックには堺雅人さん、お母さんのパムには麻生久美子さん、息子ダックスを映画『怪物』(2023)の黒川想矢さん、娘のグウェンをミュージカル「SPY×FAMILY」でアーニャを演じた池村碧彩さん他、バラエティに富んだ顔合わせ。特に大人なら池村さんのグウェンの行動に癒されっぱなし。まさに親は子離れの大切さに気付かされ、ウルッとなり、子はドキドキとワクワクを味わえ、好奇心を育てるのにピッタリな映画だったのです。どうぞ、ご家族で!

『FLY!/フライ!』
2024年3月15日(金)全国公開
© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
配給:東宝東和

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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