仲里依紗 親子で伝え合う「愛してるよ」映画おしりたんていスペシャルインタビュー

トロル原作による児童書シリーズも大人気、もちろんアニメでも人気の「おしりたんてい」。その劇場版第2弾が2024年3月20日に公開。『映画 おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』は、おしりたんていの元にブラウンとは違う、かつての相棒スイセンからメッセージが届きます。実は様々な美術館で名画が贋作にすり替えられていることを知ったおしりたんていは、以前とは雰囲気も変わっているスイセンと今の相棒ブラウンと共に事件の解明に挑みます。やがて物語は予想だにしなかった方向へと向かっていくのです。

そんな最新作での映画オリジナルキャラクター、スイセンの声を担当するのは、子を持つ親でもある女優の仲里依紗さん。今回は、お子さんも大好きだった作品に関わった感想と共に、親子での映画体験や子育てにおいて大事にしていることもご本人に伺います。(聞き手・伊藤さとり/写真・奥野和彦)

仲里依紗が語る映画の魅力「こんなにも大人っぽい作品だったんだ」

ーー お子さんが『おしりたんてい』をお好きだったそうですね。

仲里依紗さん(以下、仲):息子がそもそも『おしりたんてい』が好きなんです。絵本も家にたくさんあって、読み聞かせなどもしていました。『おしりたんてい』は本屋に行けば絶対にある有名な作品で人気がありますよね。

ーー アニメも観られていたのですか。

仲:アニメも観ていました。『おしりたんてい』のあの歌をずっと歌っていました(笑)。
アニメも絵本も見ています。ただ私が一緒だと絵本の方が多かったです。絵本には途中に謎解きなどのゲームがついているんですよね。

ーー その世界観にママが映画で参加すると聞いて、息子さんは大喜びだったのではないですか。

仲:凄く喜んでいます。旦那も面白がってくれていて、嬉しかったです(笑)。
脚本を読んでいましたが、出来上がった映画は想像とちょっと違いました。「こんなにも大人っぽい作品だったんだ」と。だから一緒に観に行く親も楽しめると思います。あと私が声を担当する【スイセン】が、滅茶苦茶頭がきれる役柄なんです。【クールなスイセン】と【可愛いスイセン】、どちらも演じないといけなかったので、その声の出し方などの切り替えが難しかったです。

ーー 2023年も映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』、『屋根裏のラジャー』で声優というお仕事をされましたが、いかがですか。

仲:声だけで演じるというのは難しいですが、元々16歳で声優をした『時をかける少女』(公開:2006年)から始まっているので声優という仕事には特別な想い入れがあります。
声優は好きですし、”続けていきたい”という気持ちがあります。実写ももちろん大好きですが、声のお仕事も私は凄く好きです。

ーー 私は子どもを産んでから前以上にアニメを観るようになりました。

仲:そうですよね、子供がいるとアニメとか観るようになりますよね(笑)。それに親になって「劇場版」を映画館に観に行くようになりました。“休日何しよう”と思った時に、アニメがやっているとありがたいんです。「あ、皆で観に行こう」ってなる。それが家族のイベントになるんですよね。アニメやドラマなどの劇場版は、そこが嬉しいんです。

ーー 『おしりたんてい』など子ども向け映画の声の入れ方は、少し独特のような気がしていますがいかがですか。

仲:わかりやすく、はっきりと喋っていますもんね。
そこが本当のリアルなお芝居とはまったく違いますから、楽しいには楽しいです。結構オーバーにやるんですよね。

ーー 【スイセン】は太陽と月みたいに変わりますが、どんな感じに演じ分けされたのですか。

仲:最初は、ピュアで本当に純粋な【スイセン】で若々しいキャラクターで可愛らしい感じなんです。女性はその時々で本当に変わりますよね。【おしり君】と相棒だった時の声もそうです。女性は恋愛で見た目も喋り方も変わりますから、声もそれと同じことではないかと思います。【おしり君】と一緒にいた時は【おしり君】に振り向いて欲しくて、無理して可愛く自分を演じていた部分もあったと思うんです。あくまでも想像なので、その後はわからないけど…、何があったんでしょうね。あの劇的な変化は。【おしり君】以外にその後、何回か違う人とお付き合いしているんじゃないかな(笑)

ーー だからこそ、大人から子どもまで楽しめる作品なんですよね。

仲:そうです。家族で楽しめる作品って難しいと思うんです。どうしても“子どもに付き合っている”という気持ちになってしまうじゃないですか。でもこの『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ!』はどちらにとってもハッピーだと思うんです。大人が観て考えさせられたりもする凄く深いテーマがあり、見応えがあります。

ーー 『おしりたんてい』は子どもに凄く人気ですが、魅力はどこだと思われますか。

仲:とにかく【おしり】というワード、「失礼、こかせて頂きます」という【おなら】もそうですが、そういうワードが子どもは大好きなんです。何故だか【おしり】に関わることすべて子どもって好きですよね。やっぱり、それじゃないですか?(笑)ちょうど、2歳と5歳の姪っ子、甥っ子が今、【おしりたんてい】にドハマリしている時期で、もう大騒ぎです。

ーー ブラウンやマルチーズしょちょうなど、犬を始めとした動物のキャラクターもたくさん登場しますしね。

仲:どのキャラクターも愛されるキャラクターばかりですよね。
あと絵本もそうですが、途中で「これってどうなったんだろう」と考えながら進んでいくんですよね。コミュニケーションが家族でとれるところが『おしりたんてい』の魅力だと思います。しかも絵本には迷路もあるので、子ども達は楽しんでいますよね。

「映画の帰りには回転寿司に行く?」とか、テーマパークみたいな思い出になれることが嬉しい

ーー ファミリー映画への参加が続いていますが、ファミリー映画の魅了を教えて下さい。

仲:家族の思い出作りに関われることが凄く嬉しいです。
私は長崎県の田舎の方に住んでいたので映画館に行くのに、車で一時間ぐらいかかっていたんです。東京はすぐに映画館に行けるけど、田舎だとすぐに行けない、そういう環境の人もいるんです。だからこそ映画を観に行くこと自体が家族にとって行事の一つになっていました。それに携われていることが凄く嬉しいです。「映画の帰りには回転寿司に行く?」とか、そんなふうにテーマパークみたいな思い出になれることが嬉しいです。

ーー 子ども達の顔が見られるファミリー向けの映画の舞台挨拶イベントもいいですよね。

仲:子どもって純粋ですよね。特にキャラクターが登場すると私自身も興奮しますが、子ども達も「ワッ!」って大興奮しちゃうし(笑)。

ーー 仲さん自身が子どもの頃に観た思い出の映画を教えて下さい。

仲:私が家族で観に行った映画は、字幕の洋画が多かったですね。無理やり連れて行かれていた感じで、親が付き合ってくれる感じではなかったです。
私の時代は子ども向けというかアニメーションを映画館で観るというのが、なかったかもしれません。初めて小学校の友達だけで観に行った映画は『オーシャンズ11』(公開:2001年)で今思えは字幕だったので、“意味わかっていたのかな?”と疑問に思っているのですが、隣町まで皆で行って、プリクラ撮ったりもして楽しかったです(笑)。

ーー 家族で一緒に映画体験をして、その後、家族で話し合ったりしますか。

仲:そうですね。思い出になっていますね。
今も息子といっぱい映画を観に映画館に行きますけど、お互いに映画の評価とか感想を色々と話しているので楽しいです。この間、二人で『アクアマン/失われた王国』を観に行った時は「やっぱ、前作も良かったけど今作の方がわかりやすかったよね」とか言っていましたね。「こういう難しくないストーリー、ママ好き」「わかる」みたいなギャルの会話していました(笑)。だから映画館にはよく行きます。私が出演している映画だと、より「いつ行く?」という感じになりますし、「ママが出てるやつ」とチラシとかも持って帰って来てくれるので、より嬉しいですね。

ーー 親になって仕事のスタイルなど変わりましたか。

仲:特には、私は実写作品だと子どもに見せられない作品ばかり出演していたので…。今になって子ども向けの作品を沢山やらせもらうことが出来ているので嬉しいです。

ーー 海外の作品(『トランスフォーマー/ビーストの覚醒』など)の吹替えも担当されていますね。

仲:好きな作品ばかりやらせて頂いています。子どもに縁のある作品を多くやらせてもらえているので滅茶苦茶嬉しいです。だから息子も喜んでいます。 

「愛している」と毎日寝る前に絶対に言っています

ーー 子どもとの付き合い方で大切にしていることを教えて下さい。

仲:はっきりと口で表現する。「愛している」と毎日寝る前に絶対に言っています。どんなに喧嘩しても、怒りながらでも「愛してるよ」って言います。息子にも「愛してるよ」って言わせます(笑)。だから喧嘩も次の日まで引きずらないです。
私自身が寝たら忘れるタイプなんですよね。もちろん、息子もそうです。「愛してるよ」で喧嘩も終わりにしちゃいます(笑)。

ーー お子さんにはどんな人になって欲しいと思われていますか。

仲:何に対しても優しい人になって欲しいです。動物にも小さい子にも優しく接して欲しい。
幸い息子は皆に優しいです。優し過ぎて我慢しているところが結構あると思うんです。子供が出来て、「優しい子がいい」と私はずっと思っていたんです。

ーー 「優しい子」になるよう子育てで何か心掛けていましたか。

仲:何だろう…、でも気づいたら優しい子になっていました。
優し過ぎて、シッターさんが心配するぐらいに。
ただ、ちゃんと言うようにはしています。例えば、息子を車道の内側に移動させて歩かせる時に「ママが車道側に行ったのは何でだと思う?」と聞きます。そして「車道の方が危ないでしょ。だからママは移動したの」と移動した理由を話したりします。

ーー きちんと教えているのですね。教えないと分からないことって多いですよね。

仲:そういうことをちゃんと口に出して伝えていますね。
私は旦那からされたことありませんが…、私は“いつも車道側だな”と思いながら歩いています(笑)。息子にはこういう人にはなって欲しくないと思って、毎回、口に出して言う感じです。学んで欲しいと思って。

ーー プライベートも仕事も充実させるために、子育てを楽しむ為にしていることがあれば教えて下さい。

仲:私は楽しい事をさせてもらっています。子どもが我慢をしている分、私はお仕事をやらせてもらっているんです。私が“大変だ”と思う仕事も子どもが頑張ってお留守番してくれているから出来ることです。だからWin-Winですよね。子どもが楽しいことも付き合ってあげたいという感じでやっています。あとは子どもが「やりたい」と言ったことはやらせてあげたいです。でも、息子は結構効率を考えているんですよ。今、大谷選手ブームだから「野球をやりたい」と言うんですが「土日は潰されたくない」と言うんですよ。「じゃあどうしようか、土日しかないんだよね。クラブって」と言うと「そうか。たまの土日だったらちょっと体力ある時ならいいけど…、やっぱり、キツイかな、土日は」って(笑)。やっぱり休みたいらしくて、かなりのZ世代でビックリしています。

ーー ちゃんと子どもなりに考えているのですね。

仲:考えていますね。自分の体力のことまで考えています。
  もしかしたら“土日は家族とゆっくりしたい”と考えているのかもしれませんが。

ーー 本作『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』も家族皆さんで行かれるのですか。

仲:皆で行きたいです。ちょうど春休みなので、東京にいたら東京で、実家に帰っていたらジィジ、バァバと一緒に観に行ったりして、楽しいイベント事になるので、面白い映画に参加出来て良かったです。

スタイリスト:遠藤リカ
ヘアメイク:三浦咲衣(FLEURI) sakie miura(FLEURI)

『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』
原作:トロル
監督:セトウケンジ 脚本:高橋ナツコ 成田 順 音楽:高木 洋
声の出演:三瓶由布子 齋藤彩夏 櫻井孝宏 杉村憲司 池田鉄洋 小西克幸 中村まこと 渡辺いっけい
ゲスト:仲里依紗 津田健次郎 二又一成
キャラクターデザイン・作画監督:真庭秀明 製作担当:末竹 憲 編集:吉田公紀 録音:澤村裕樹 音響効果:中原隆太
美術デザイン:増田竜太郎 美術監督:東 美紀 色彩設計:森 綾 撮影監督:則友邦仁
制作:東映アニメーション 製作:2024「映画おしりたんてい」製作委員会 配給:東映
©トロル・ポプラ社/2024「映画おしりたんてい」製作委員会

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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