すみっコなあなたへ、低刺激で優しい物語『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』

コラム

2023.11.01

自分みたいなカワイイすみっコの世界

個人的なお話しから書き始めますが、娘には「すみっコぐらし」が大好きなお友達がいます。その子は、極度の人見知りで口数が少なくて、場所見知りをするから、保育園に行ける日もあれば行けない日もありました。私と娘がそのキャラクターを深く知ったのはその子のお陰でもあり、彼女は「しろくま」と「ねこ」が好きと教えてくれました。

他にも「すみっコぐらし」を好きな大人も知っています。人との付き合いが上手くないと公言する上で、ちょっと緊張気味に私に話しかけてくれるようになり、娘によく「すみっコぐらし」のグッズをくれるんです。そんな「すみっコぐらし」が映画になった2019年、娘は「〇〇ちゃんの好きなすみっコぐらし」と言って映画館で目を輝かせてスクリーンを見つめていました。その後もその子と同じ小学校になったことを喜んで、場所見知りを発動してしまうお友達が心配だからと登校時は家に迎えに行きました。

ビビり屋さんにも安心の刺激少なめの世界

今や世界中から愛される「すみっコぐらし」。映画シリーズ3作目。けれど、初めてすみっコたちを知るお友達のために、冒頭に自己紹介のようなナレーションがちゃ〜んと入ります。あ、すみっコたちは、声を出さないので、毎回、ナレーションで捕捉されながら彼らの物語を見つめていくことになります。今回もビビり屋さんのすみっコたちを驚かさないような柔らか声の本上まなみさんがナレーションを担当してくれています。

新作の舞台も子どもの憧れの場所

思えば、映画第1弾『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(2019)は「絵本」という皆がよく知る色んなおとぎ話がモチーフ、第2弾『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』(2021)は「魔法」という子ども達の憧れである魔法使いとのお話、そして今回の第3弾『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』は、作田ハズムさん監督による「おもちゃ工場」という子どもが夢見るお仕事が描かれるお話。ちなみに新作の物語を書いたのは、第1弾を書いた劇団ヨーロッパ企画の角田貴志さん。この時にすみっコたちにセリフを喋らせず、ナレーションで展開する方法が確立されました。

アナタの良いところは知っているよというメッセージ

最新作は「すみっコぐらし」の人気の秘密を再確認できる作風。その理由は、新たに登場する「くま工場長」は、ちょっぴりネガティブなすみっコたちの個性をちゃんと見ているんです。しかも褒め上手。他にも「しろくま」の過去がチラリと見えてホロリと来たりするんですが、人見知りでも恥ずかしがり屋でも自分に自信がなくても、み〜んな必ずどこか良いところはあって、助け合って“自分なりの幸せを感じながら生きていけばイイ”というメッセージが聞こえてくるんですよね。

子どもや大人にも安心の優しい世界が展開

可愛くて笑いのセンスがあって、びっくりされることが苦手な子どもたちにも安心して観られる優しい映像とサウンドの物語。それに「Perfume」による主題歌「すみっコディスコ」も覚えやすそうですぐに子どもたちが口づさみそうな曲です。今回も大人ももちろん癒されるんですが、「老いてもアナタは必要な存在」と言われているような表現もあって、これぞ全人類を抱きしめる物語だわ、とウルっと来てしてしまいました。

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ

11月3日(金・祝)全国ロードショー
©2023 日本すみっコぐらし協会映画部
主題歌:Perfume「すみっコディスコ」(Polydor Records)
原作:サンエックス
監督:作田ハズム
脚本:角田貴志(ヨーロッパ企画)
美術監督:日野香諸里
アニメーション制作:ファンワークス
配給:アスミック・エース
【公式サイト】 https://sumikkogurashi-movie.com
【公式Twitter】https://twitter.com/sumikko_movie
【公式Instagram】https://www.instagram.com/sumikko_movie/

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