「愛してくれた人を幸せにする」ユニコが伝える普遍的な「愛」のあり方
2023.02.28
日本を代表する漫画家のひとりに「手塚治虫」がいます。『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『火の鳥』『ブッダ』などタイトルを書き出したらキリがないほど多くの傑作を生み出した巨匠の作品は、一貫して「命」における哲学をわかりやすく子ども達に伝えているようにも感じます。
そんな中で幼い子どもにまずは見て欲しいアニメをご紹介。それは手塚治虫の原作を映画化したユニコーンの子どもユニコの冒険を描いた『ユニコ』(1981年)です。
人を幸せにするユニコーンの子供の物語
あるユニコーンの母親が子どもを生みます。その中のひとりユニコは、「人を幸せにする魔法」を使えることから神々に問題視され、西風の精によって遠く離れた忘却の谷に置いていかれます。そこでひとりぼっちの悪魔くんと出会いますが、ユニコが仲良くしたくても誰かに愛されたことがない悪魔くんは天邪鬼な対応ばかり。
けれどユニコとの交流の中で優しさに気づき「君が愛してくれたから幸せにするよ」という言葉から初めて友達の関係性を知ります。その後、ユニコはまた違う地へ連れていかれ、人間に捨てられた魔女に憧れる猫・チャオと出会うのですが…。
幸せとはなんなのかを分かりやすく説明
ユニコが物語から伝えるのは、「愛してくれた人を幸せにする」というもの。それって考え方によっては「自分を愛してくれた人にお返しするみたいで傲慢じゃない?」と思えるかもしれませんが、ストレートな見方をすると「自分を大切にしてくれた人が友達」「自分を大切にしてくれた人を大切にしよう」という家族間にある無償の愛とは違う普遍的な「愛情」のあり方でした。
園児になれば家庭外の人とのコミュニケーションを学ぶことになりますが、そこで覚えてもらいたいのが「好きな人を傷つけない」ということ。そして小学生で更に濃密な友達関係を構築する上で伝えたいことが「自分を大切にする人との関係が幸せ」という自己愛と他者への愛情についてです。
ユニコは「自分も人も傷つけてはいけない」というテーマについて、可愛らしいキャラクターが語らうメルヘンの世界を舞台にして分かりやすく説明してくれます。
ユニコが何故、子供たちに愛されるのか?
そもそも「ユニコ」はサンリオが発行する少女雑誌「リリカ」(1976年~)に連載されていました。のちに「小学1年生」に連載は移りますが、その原作の中から「ほうきにのったネコ」と「ひとりぼっちのユニコ」のエピソードを織り交ぜて映画化したのが本作『ユニコ』です。しかも西風の声に聞いたことがあると思ったら女優・倍賞千恵子さんが担当。
当時は、サンリオらしくキャラクターグッズも人気で、私も映画館で観に行くくらい好きで悪魔くんとユニコのキーホルダーを大事に持っていました。けれど何故、子どもから大人まで手塚治虫が人気だったのか、その理由は、手塚治虫自身がディズニーをこよなく愛し、滑らかな動きと丸みを帯びたキャラクターというのも少なからず影響があったのかもしれません。
80年代の映画といえどもその動きの柔らかさに魅了されるユニコ。しかも猫のチャオの歌は一度聞いたらつい口ずさんでしまう可愛い曲なので小さなお子さんにもオススメですよ!
伊藤さとり
映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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ユニコ
人々をやさしく、明るくしてしまう不思議な力の白い角を持った、ユニコーンの子供ユニコ。ユニコの力を恐れた神々は、西風の精に命じ、ユニコを人も住まぬ忘却の彼方へと追いやります。見知らぬ土地に運ばれたユニコ。悪魔くんや猫のチャオといった様々な仲間との出逢いとと別れの中で、お互いに信じあう心が、ユニコの愛の力を目覚めさせます。
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※この記事は、令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成しました
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