中国アニメ『雄獅少年/ライオン少年』映画で世界を知るきっかけづくり

コラム

2023.05.20

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アニメレジェンドは日本、けれど世界にもアニメはある

世界におけるアニメーション映画というジャンルでは、『トトロ』などの「スタジオジブリ」の他、『すずめの戸締り』が世界で大ヒット中の「新海誠」、『AKIRA』が世界的に知られる「大友克洋」、米アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート『未来のミライ』の「細田守」、ゴールデングローブ賞アニメ映画賞ノミネート『犬王』の「湯浅政明」他、多くのクリエイターが日本には存在します。

では海外では?というと「ディズニーアニメーション」や「ピクサー」が最初に頭に浮かぶだろうし、他には『ミニオンズ』シリーズなどの「イルミネーション」、『シュレック』シリーズの「ドリームワークス」というスタジオ名が上がります。けれどそれだけでなく世界各国には様々なアニメーションが存在するのが事実。そして世界各国で製作されたアニメーションを観ることで、その国特有の歴史や文化を知ることが出来るんです。

中国で特大ヒットを記録した獅子舞アニメ

今回、ご紹介するのは中国を知ることができ、本国では2021年に公開され、約50億円という特大ヒットを記録した中国映画『ライオン少年』です。舞台は広東省の村。ここで祖父と暮らす少年チュンはある日、美しくも凛々しい「獅子舞」を目にします。しかも赤い獅子頭を操っていたのは少女で、彼女はチュンにその獅子頭と獅子舞競技会のチラシを渡して姿を消したのです。

偶然にもその獅子舞競技会はチュンの両親が出稼ぎに行っているところだったので、チュンは自分の姿を見せたい思いから同じく両親が出稼ぎに行っている友人2人とチームを結成します。けれど「獅子舞」はそう簡単なものではなく、彼らは昔、獅子舞の名手だった人物を探し当て、弟子入りを懇願するのでした。果たしてチュン達は獅子舞競技会に出場することが出来るのでしょうか?そしてチュン達を馬鹿にする村の獅子舞チームに打ち勝つことが出来るのでしょうか?

神話とは違うリアルな中国の子供たちの生き様

本作の特徴は、日本でも人気の中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』のような原作があるわけでもなく、神話などがベースとなるファンタジーでもなく、あくまでも現代の中国を舞台にした完全オリジナルストーリーであること。そして無形文化財として知られる「獅子舞」の競技にかける裕福ではない少年たちの友情と勝利を手にすることへの努力を描くというものでした。

そこで目にするのは、いじめられっ子といういわゆる負け組の彼らが、悔し涙を見せながらも諦めずに舞の練習を続け、体力をつけ、太鼓を叩き、情熱的な赤い獅子頭で舞を表現していく過程でした。まさに弱虫だった少年が努力の末、誰もが釘付けになる舞で突き進むヒーローになっていくという「諦めないカッコ良さ」と、親の代わりに出稼ぎに行く姿や「家族の為に働く子ども」を知り、「お金の大切さ」を学ぶ映画だったのです。

実写のようなアニメーション

さらに驚かされるのはカラフルで美しい映像と実写のようなカメラワーク。夕日など光の反射が映し出されるシーンは、従来のフィルム映画の真似をして焦点の距離や絞りなど実写映画の撮影基準に則ったそうで、横に動くカメラワークなどレールやクレーンでの撮影をイメージしたそうです。あるシーンを作るのに10~13時間かけるなど、そのこだわりは映画を観れば納得の映像美でした。

そこに広東省で活動するアーティスト、九連真人の生命力に満ちた熱い歌詞による歌声「莫欺少年窮」が劇中で流れ、日本語吹替版主題歌にはのんの新曲「この日々よ歌になれ」が決定。希望を見出す「諦めない心」が歌からも伝わってくる力強い本作。そんな映画を家族で観れば、子ども達はきっと優美な「獅子舞」の真似をしたくなるはず。しかもチュンの声は「鬼滅の刃」の炭治郎を担当する人気声優・花江夏樹。終始、熱く鼓動する少年たちのドラマに親子で魅了されること間違いなしです。

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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『雄獅少年/ライオン少年』
5月26日(金)全国ロードショー
■監督:孫海鵬(ソン・ハイポン)
■エグゼクティブ・プロデューサー:張苗(チャン・ミャオ)
■原題:雄獅少年 英題:I Am What I Am
■日本語吹き替え版声優:花江夏樹 桜田ひより 山口勝平 落合福嗣 山寺宏一 甲斐田裕子
■提供:北京精彩、泰閣映畫、面白映画、Open Culture Entertainment、ギャガ
■配給:ギャガ、泰閣映畫、面白映画、Open Culture Entertainment
2021 年 / 中国語音声 / 日本語字幕 /
公式サイト
https://gaga.ne.jp/lionshonen/
公式Twitter
https://twitter.com/lionshonen

※この記事は、令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成しました

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