小野あつこさんが語る子どもへの寄り添い方~映画しまじろう『しまじろうと ゆうきのうた』

子ども達に大人気の「しまじろう」が映画に。CGアニメーションによる美しくて夢溢れる世界をしまじろう達と子ども達が一緒に冒険できる新作、映画しまじろう『しまじろうと ゆうきのうた』。そんな本作で今回、主題歌を担当するのはNHK「おかあさんといっしょ」で第21代目うたのおねえさんを務めた小野あつこさん。実は音楽隊のフラミンゴのひとりとして声優にも挑戦した小野あつこさんに、映画のこと、なかなか勇気を出せない子どもとの付き合い方まで伺いました。(聞き手・伊藤さとり/写真・奥野和彦)

映画しまじろう『しまじろうと ゆうきのうた』小野あつこさんインタビュー

ーー 今回、映画しまじろう『しまじろうと ゆうきのうた』に参加となりましたが、いかがでしたか

小野:私自身も子どもの時からずっとテレビでアニメを観ていましたし、【こどもちゃれんじ】もやっていましたので、とても身近な存在でした。なので、映画しまじろうで初めてお話を頂いた時はとても驚きました。

ーー 主題歌「ゆうきのうた」も担当されていますが、一度聞いたら忘れられない曲でした。
歌われていかがでしたか。

小野:「ゆうきのうた」は、作品のタイトルの中にも入っています。映画は、歌がキーワードになっているお話で、この歌で自分自身を奮い立たせ、仲間と一緒に同じ方向を向いて皆で励まし合いながら、冒険していきます。作品にとっても大切な歌を歌わせて頂けることが本当に嬉しくて、最初は夢かと思って信じられませんでした。
今回、“お子さんたちが一緒に歌いたくなるような歌い方が出来たらいいな”と思いながら歌わせて頂きました。

ーー そうなんですね。ちなみに、子ども達が一緒に歌いたくなるような歌い方って、具体的にはどんなアプローチなんですか。

小野:今回の歌はメッセージ性も強くて、力強い歌詞もあるんです。そういうところはお子さんたちが歌いたくなるよう、お子さん達を支えるではありませんが、歌を聞いて下さる方の背中を押しつつ、でも一緒に歌いたくなるような感じのバランスを考えたりしていました。

自分を信じるには勇気が必要

ーー 『劇場版おかあさんといっしょ』もそうですが、映画しまじろう『しまじろうと ゆうきのうた』も子ども達が手遊び出来るような参加型でした。映画をご覧になってどうでしたか。

小野:色々な挑戦の中で指差しだったり、拍手だったり、一緒に歌える場面があるので、より【しまじろう】達と一緒に冒険に参加している、一緒にミッションをクリアしている気持ちになれると思います。登場するキャラクターたちともグッと心の距離が縮まるはずです。1時間の映画の中でたくさんのことを、お子さん達が体感(経験)出来るのが面白いと思いました。

ーー 確かにミッションクリアとかゲーム的な要素もありますね。

小野:達成感というか、1つ1つクリアしていくとより気持ちがノっていくというか、「次も一緒に頑張ろうね」と【しまじろう】達を応援したくなりますよね。その結果、お子さん達もどんどんとストーリーに引き込まれていくと思います。

ーー お話全体の感想はどうですか。

小野:自分を信じるには勇気が必要です。でも、自分を信じる力は、自分を応援してくれる周りの仲間の力があってこそ、その力が出せるのではないか?と作品を観て思いました。
もちろん自分も勇気を出して頑張るけれど、周りで自分を応援してくれる人の存在も大切で、どちらも大切だということを改めてこの作品を通して思いました。

皆さんから頂くパワーが、私を支えてくれて、頑張ることが出来ました

ーー 小野さんにとって、頑張り続けることが出来るような、応援してくれる存在はどなたですか。

小野:『おかあさんといっしょ』を6年間やらせて頂いた中で、色々なことがありました。私も周りの仲間や番組を観て下さっているお子さん、親御さん、皆さんに応援してもらいました。皆さんから頂くパワーが、私を支えてくれて、頑張ることが出来ました。

ーー 映画に登場する自分に自信がなく、怖気づいてしまう【マイリー】というキャラクターに共感する子どもも多いと思います。
【マイリー】のような子に対して、どのように勇気づけているのですか。

©Benesse Corporation 1988-2025/しまじろう ©上海合源文化传媒有限公司

小野:実は私も【マイリー】に凄く共感出来るんです。私は子どもの頃、人見知りで輪に入れない子どもだったんです。
【マイリー】のような子どもには共感するというか、寄り添うことを大切にしています。
その子が自分の力で1歩踏み出せるように、あくまでも自発的に行動出来るような寄り添い方を心掛けています。無理強いはせず、その子自身に「ちょっとやってみようかな?」と思ってもらえるような距離感、声がけを大事にしています。

ーー どんな声がけをするのですか。

小野:落ち込んでいる子がいれば、どうしたら気持ちを切り替えることができるのか?前向きになれるのか?を限られた時間の中でも見極めるようにしていました。
あえて距離をおくと自分から来る子もいるので、1人1人違うのでそれも個性ですよね。

自分が好きなものとずっと仲良く友達でいること

ーー 小野さんが歌を歌うことを仕事にしようと思われたきっかけを教えて下さい。

小野:私は4歳の頃からピアノを習っていました。音楽はもちろん好きだったのですが、それ以上にピアノの先生の事が大好きでした。いつも子どもたちに囲まれていて、優しくて笑顔の絶えない先生の姿が素敵で、「先生のようになりたい」と思うようになりました。
それで高校にはピアノで入学したのですが、周りのレベルが凄すぎて…。自信がなくなって
しまったんです。挫折を経験しましたが、それでも音楽が好きだったので、音楽から離れた
くなかったんです。
その時副科で専攻していた声楽にどんどんのめり込んでいきました。そこで出会った先生や仲間たちの影響も大きかったと思います。歌は他の楽器よりもスタートが遅くても可能性があると思い勇気を出して大学から声楽に転向しました。

ーー 歌手を目指している子ども達にアドバイスをするとしたら。

小野:自分が好きな歌や自分が好きなものとずっと仲良く友達でいることです。好きなものを極めるのは、素敵なことだと思います。

ーー 好きなものを持続させる方法は何ですか。

小野:私の場合、好きなものを通して出会った友人や先生、仲間の存在が大きかったかもしれません。

年齢関係なく、皆が励まされる作品

©Benesse Corporation 1988-2025/しまじろう ©上海合源文化传媒有限公司

ーー 声優にも挑戦されましたが、いかがでしたか。

小野:初めて映像を見ながら声をあてることをしましたが、映像でキャラクターが喋り始めた時に喋るのですが、タイミングがなかなか合わなくて難しかったです。
あと、お芝居だと目の前に相手がいるので、掛け合いも相手の反応を見ることが出来るのですが、私が声の収録を行った時、皆さん(他のキャスト)の声が入る前だったんです。それで “最終的にどうなるのか?” を想像しながら収録を行いました。だからこそ完成した作品を観た時、“こういうふうになったんだ” という思いもあり、また別の感動が生まれました。
声優として自分ではないキャラクターになりきるのは、本当に新鮮で面白かったです。

ーー この映画を親御さんに、薦めるとしたら何といいますか。

小野:年齢関係なく、皆が励まされる作品です。
もちろんお子さんたちは、声を出したりするなど参加型で楽しめます。大人の方はストーリーに背中を押してもらえますし、心が動かされる場面がたくさんあると思います。
是非、小さなお子さんから親御さんまで、家族みんなで観てもらいたいです。

「子どもたちのはじめて」のきっかけとなるお手伝いが出来れば

ーー 今の時点でご自身の仕事をどのように思っていますか。

小野:おかあさんといっしょの番組を卒業後も、各地で行われている子育て応援イベントなどに出演させて頂いています。防災や食育を一緒に学んだり、野球やサッカーなどの試合に足を運んでもらいスポーツの楽しさを体験してもらったり、コンサートホールで0歳から楽しめるオーケストラとの生演奏会で歌わせて頂いたりと、「子どもたちのはじめて」のきっかけとなるお手伝いが出来ていれば嬉しく思います。
今回のしまじろうの映画も家族で楽しめるのでぜひ映画館デビューの機会にして頂ければと思います。

ーー 子どもに体験させるというのは、知育には大切なことですよね。

小野:そうですね。見たり、聞いたり、実際に身体を動かしたり、何かを体感するというのは、お子さんたちの刺激にもなります。そういうお子さんたちの成長や発見を親御さんが一緒に身近で見られるというのは、ご家族にとっても良い時間になると思います。
日常の中の思い出作りという大切な時間を皆さんと一緒に過ごすことが出来る、それが今一番の楽しみでもあります。
この映画で映画館デビューするお子さんもいると思います。休憩時間もあるので、0歳から楽しめます。沢山のお子さんに観に来て頂けると嬉しいです。

映画しまじろう『しまじろうと ゆうきのうた』
2025年3月14日(金)全国公開
公式HP:https://kocha.benesse.ne.jp/kodomo/open/movie/2025/

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
●連載一覧はこちら>>

タグ:

Page Top

error: Content is protected !!