親にできることって?映画『屋根裏のラジャー』イマジナリの世界で大冒険

コラム

2023.12.11

© 2023 Ponoc

イマジナリフレンドとは

イマジナリフレンド。
これは子ども時代に出来ることが多く、大人の目には見えない子どもの友達です。いわゆる「想像の友達」と言われますが、それを映画化した作品が『メアリと魔女の花』のスタジオポノックの最新作『屋根裏のラジャー』でした。原作のA.F.ハロルド「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)をアニメーション映画として生まれ変わらせ、壮大なスケールで贈るファンタジー・アドベンチャーとなる本作。監督は数々のスタジオジブリ作品に関わってきた百瀬義行さん、プロデューサーは『かぐや姫の物語』や『思い出のマーニー』といった米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門にノミネートされた作品にも関わってきた西村義明さんです。観ると自分の子どもを思い涙、幼い頃の自分を思い出し涙、という心の洗濯をしてくれる大傑作でした。

イマジナリフレンドが体験する驚異の冒険

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主人公は、イマジナリフレンドのラジャー。彼の友達である父親を亡くした少女アマンダにより、様々な冒険を一緒に楽しんでいたところ、恐ろしい人物に遭遇したことで2人は離れ離れに。イマジナリは人間に忘れられると消えてしまう運命だったことを仲間から教えてもらったラジャーは、新たな仲間たちと驚異のイマジナリ体験を続けながら大切なことに気づくのです。

自分の幼少期を思い出す不思議体験

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子どもの創造力は無限大!何気ない道具が冒険のアイテムに変化し、小さな部屋は冒険のステージへと姿を変える。これがアニメーションという伸びやかなイラストによって姿を変えていく様子の美しさたるや、言葉では明確に表現できないほど。本作は、ラジャーの視点を通して、子ども達の想像の世界での大冒険を体験しながら、忘れられていく悲しみを描くことで、大人になった私たちが幼少期の記憶にも遡る不思議な感覚を味わうことに。小さい頃に味わった楽しい思い出や悲しい記憶に触れる魔法の映画だったのです。

見えないものを信じるのも親の役目

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それだけでなく、劇中、イマジナリとはまた違う恐ろしい存在にアマンダとラジャーは遭遇します。それは大人には見えないものらしくお母さんに話しても信じてくれないことから、アマンダは悩み苦しむことになるのです。それって子どもが「お化けを見た」と言う時の親の当たり前の対応のひとつ。けれど考え方によっては自分には見えないだけで、子どもには見えているかもしれません。ならば頭ごなしに「お化けなんているわけない」と言うのは間違っているし、自分の目が正しいと思うこと自体が傲慢ではないでしょうか。大事なのは、「子どもの言葉を信じる」こと。そうすれば子どもは親のことを味方だと認識し、少しは安心するし、恐怖に打ち勝つ方法を一緒に見出してくれるはずと思うでしょう。家族でなんでも話し合える関係を作りたいなら、否定しないで話を受け入れること。映画にはそんな親と子の大切な関わり方も描かれていましたよ。

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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『屋根裏のラジャー』
2023 年 12 月 15 日(金)全国東宝系にて公開
© 2023 Ponoc
原作: A.F.ハロルド「The Imaginary」 (「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)
監督: 百瀬義行
プロデューサー:西村義明
制作:スタジオポノック
製作「屋根裏のラジャー」製作委員会

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