裕福=幸せ?偏見を溶かす『金の国 水の国』これからの子どもたちへ

コラム

2023.01.19

©岩本ナオ/小学館 ©2023「金の国 水の国」製作委員会

女の子と男の子の価値って?

人生で得をする人とはどんな人なのでしょうか?例えば学歴があり、年収の高い男性は勝ち組とか、若くて美人な女性は得をするとか言う人が居ますが、それをそのまま子ども達に教えることは果たして良いのでしょうか?

もし親がそう教えてしまったら、女の子は外見に磨きをかけて玉の輿に乗ることが幸せだと勘違いするかもしれないし、男の子は有名な大学に入って一流企業に勤めることが、ステータスだと思ってしまうのではないでしょうか。それにどちらも結果的に「裕福なこと」が幸せだという考えに陥ってしまいそうです。

ではアナタの考える幸せとはなんなのか?それを子ども達にも楽しく教えてくれるのが「このマンガがすごい!」で、2年連続1位に輝いた岩本ナオの原作を映画化した『金の国 水の国』なのです。

美女とは言い難い王女と貧しい若者が主人公

©岩本ナオ/小学館 ©2023「金の国 水の国」製作委員会

物語は、水は無いけれど商業が発展している裕福な“金の国・アルハミト”と、すぐ隣にある貧しいけれど水と緑に恵まれている “水の国・バイカリ”の関係性から始まります。この二つ国は長年いがみ合う中で戦争が起きないようにするためにある約束を交わしていました。

それは「国で一番賢い若者と、国で一番美しい娘をそれぞれの国に嫁がせる」というもの。けれどそれぞれの国の王はその約束を守らず、アルハミトの国王は、一番おっとりしていて関心のない末の王女サーラのもとにバイカリの婿を貰うことにし、バイカリの国王は、貧しい建築士ナランバヤルのもとにアルハミトの嫁を与えることにしたのです。

しかも両国王ともそれぞれの国に贈ったのは人間ではなく犬と猫!偶然の出会いからお互いの状況を知ったサーラとナランバヤルは、国同士が戦争にならないように夫婦のフリを始めるのですが……。

何気ない偏見が人を傷つける

©岩本ナオ/小学館 ©2023「金の国 水の国」製作委員会

劇中、あるシーンでサーラは「アルハミト一美しい娘」として大勢の前で紹介されます。そこに立ち会った人々はサーラの外見を見るなり、口々に否定的な言葉を吐くのです。そんな中、ナランバヤルの父親は“美しさは外見だけではない”と彼らに唱えます。

確かにサーラは気立ても良く、笑顔の可愛らしい女性でした。いっぽうのナランバヤルは、困っているサーラの為にひと肌脱ごうとすぐに婿のフリを引き受けますが、サーラの姉に「バイカリの婿殿」と言われ続け、それに気づいたサーラが「名前で呼んでいただけませんか?」と正論を唱えます。

確かに“人を幸せにする人”は見た目でもなければ、地位や裕福さでもなく、「相手への思いやり」だけなのです。

男らしさ、女らしさの過ちを知る登場人物

©岩本ナオ/小学館 ©2023「金の国 水の国」製作委員会

他にもナランバヤルのたくましい姉や、バイカリの国王がゲイだったり、マッチョな男達が一流の建築士だったりと、「男らしさ」「女らしさ」という決めつけの馬鹿馬鹿しさや、同性を愛することもその人が幸せならOKという“固定概念”を捨てるきっかけとなる登場人物が多数登場。

その人が幸せならそれで良いし、外見で人を判断してはいけないことを伝える『金の国 水の国』は間違いなくこころを豊かにする映画です。

しかも音楽を担当するのはアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズのエバン・コールであり、劇中歌「Brand New World」他を歌う琴音の透き通った歌声は、柔らかな画にピッタリ!心潤うストーリーは間違いなく、偏見を溶かして純粋な心を培う栄養となりますよ。

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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映画『金の国 水の国』

2023年1月27日(金)全国ロードショー
原作:岩本ナオ「金の国 水の国」(小学館フラワーコミックスαスペシャル刊)
キャスト:
賀来賢人 浜辺美波
戸田恵子 神谷浩史 茶風林 てらそままさき 銀河万丈
木村昴 丸山壮史 沢城みゆき

監督:渡邉こと乃 脚本:坪田 文 音楽:Evan Call
テーマ曲(劇中歌):「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」
Vocal:琴音(ビクターエンタテインメント)
アニメーションプロデューサー:服部優太 キャラクターデザイン:高橋瑞香 美術設定:矢内京子
美術監督:清水友幸 色彩設計:田中花奈実 撮影監督:尾形拓哉 3DCG監督:田中康隆 板井義隆 特殊効果ディレクター:谷口久美子
編集:木村佳史子 音楽プロデューサー:千陽崇之 鈴木優花 音響監督:清水洋史
アニメーションスーパーバイザー:増原光幸
プロデューサー:谷生俊美 アソシエイトプロデューサー:小布施顕介
アニメーション制作:マッドハウス

配給:ワーナー・ブラザース映画
映画公式サイト
kinnokuni-mizunokuni-movie.jp
Twitter:@kinmizu_movie

※この記事は、令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成しました

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