ヤギはエサ!?映画『あらしのよるに』子どもに教えたい人生の大切なこと

コラム

2022.10.13

©2005『あらしのよるに』製作委員会

「人は外見だけで判断をしてはいけない」
これって、とても大事なことで名作『美女と野獣』では、外見思考の王子を魔女が野獣に変えてしまいましたね。そう、人生において大事なことのひとつが上記の格言。
これを小さい子に映画を通して教えるのに最適な作品が、1994年に刊行された木村裕一の絵本「あらしのよるに」の同名映画。あの本を手にした当時、その素晴らしい物語から“続きが読みたい”と思ったほどで、それは多くの人の共通の思いだったようで、その後、シリーズ化されました。そんな名作が、杉井ギサブロー監督のもと、温もりあるタッチで2005年に映画化され大ヒットを記録したのが『あらしのよるに』です。

ヤギとオオカミは友達になれる?

©2005『あらしのよるに』製作委員会

物語は、嵐の夜に山小屋に避難した一匹のヤギ・メイが、同じく山小屋に逃げ込んできたオオカミのガブと暗闇の中、夜通し語り合って仲良くなるところから始まります。でも捕食される側(ヤギ)と捕食する側(オオカミ)がどうして友達になれたのか?それは相手の姿が見えなかったこと。そして二人が鼻風邪で臭いを嗅ぎ分けられなかったことでした。そんな二人の物語はここからが本題に。意気投合した二人は、互いの姿が判らないので「あらしのよるに」を合言葉に、お昼に一緒にお弁当を食べる約束を交わすのですが……。

本当の友達は「自分を大切にしてくれる人」

©2005『あらしのよるに』製作委員会

果たして真実の姿を知った時、二人は友達になれるのでしょうか?しかも互いの集落からは「友達になれるわけがない、命を奪う、もしくは美味しい動物」と生まれた時から植え付けられている種族です。そんな状況の二人を主人公においたこの作品の素晴らしい点は、「一番見るべきところは、自分を大切に思ってくれる相手か?」というところでした。口先だけの仲間と違い、身を呈して守ってくれる友達とでは、どちらに“思いやり”があるかは一目瞭然です。劇中、何度も「ヤギはエサ」という言葉が出てきますが、ガブはメイのことをエサではなく唯一の友達と思って、とても大切に接していました。

大切な人との出会いを綴るaikoの主題歌

この二人の行く末を見守るような気持ちで、家族で一緒に観てほしい。そして観終わったら子どもと話し合いながら「本当に優しい人は外見で人を判断しないこと」や「好きな人を大切にすること」について教えてほしい、そう思える作品『あらしのよるに』。
エンドロールに流れるaikoの主題歌「スター」には、“大切な人との出会いが人生を輝かせる”というメッセージが詰まっていて、美しいメロディラインのバラードが映画のテーマと共に心に染み渡るのです。

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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『あらしのよるに』

©2005『あらしのよるに』製作委員会
U-NEXTにて配信中

※この記事は、令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成しました

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