『ひつじのショーン』の魅力はどう生まれた? 2人の監督に聞く映画づくりの舞台裏

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アカデミー賞でも4度の受賞を果たしているクレイパペットを使ったストップモーション・アニメーションの製作会社アードマン・アニメーションズ。代表作には「ひつじのショーン」「ウォレスとグルミット」があります。手法はクレイの人形とセットを手作りし、それを一コマずつ撮影するという根気がいる作業で物語を綴っていくというもの。

そんな手作業で生み出した劇場用長編アニメーション・シリーズ第3弾の『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』が10月23日(金)から全国公開されます。

今回は、ハロウィンシーズンにショーン達が大事にしているかぼちゃ畑を牧場主がめちゃくちゃにしてしまったことで、ショーンがマッドサイエンティストになって謎の薬を開発します。更に事態は思わぬ方向へ。牧場主まで行方不明になってしまったモッシーボトム牧場は無事にハロウィン・パーティを楽しめるのでしょうか、という秋にピッタリの親子で楽しめる可愛いお話です。ちなみに「ひつじのショーン」はほぼセリフ無し、リアクションの声で描かれる全世代向けのアニメーションですが、今作では初めて日本版吹替も制作。配達員(ピザボーイ)に中村倫也さん、他にもガンバレルーヤのお二人が声優を務めているのにも注目です。

そんな『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』の監督を務めたお二人、スティーブ・コックスさんとマシュー・ウォーカーさんに、パペットアニメーションの作り方と映画の魅力を伺いましたよ!(聞き手・伊藤さとり)

2人の個性が生きる、ストップモーション制作の舞台裏

スティーブ監督(左)とマシュー監督(右) © 2026 / AARDMAN ANIMATIONS Ltd – All Rights Reserved

ーー ハロウィンがテーマになっていて、とても可愛らしかったです。
今回の作品はどんなところを意識して作られましたか。

マシュー監督:映画という形になりますとワクワク出来るもの、楽しいもの、そしてコメディ色もありますが、僕はエモーショナルなものにしたいと考えていました。特にキャラクター達にそういう部分を持たせたいと思った時に、牧場主と獣医師の恋愛が思い浮かびました。そこからショーン側ではどんな物語になるかを考えました。今までだとショーンがリードしている映画作品のイメージが強いですよね。最初はショーンと牧場主、それからショーンと他の関係性という感じでした。今回はショーンと群れの関係に目を向けようと思ったんです。ショーンは“自分がリードしないと”“解決しなければ”と思い過ぎているんです。だから何でもかんでも他の人の助けを借りずにやろうとしてしまって、自らマッドサイエンティストになってしまう。お陰で想像とは違う方向に動かされていくという物語を考えました。

ーー 冒頭がマイケル・ジャクソンの『スリラー』から始まって、ミイラ男が出てきて、ヒッチコックの映画『サイコ』(1960)のようなシーンもあり、オオカミ男も登場し、映画『13日の金曜日』(1980)に登場するジェイソンのようなキャラクターも出てきます。このようなホラー映画のオマージュのようなシーンは、どういうところから生まれたのですか。

マシュー監督:めちゃくちゃ作業的に楽しかったです。いわゆるホラー映画のあるあるを上手く取り入れながらそのコメディバージョンをこの映画の中に取り入れる。ただ、やはり物語にそってないといけないので、無理に落としこむことは避けたかったです。結果的に、凄く有機的に入れています。個人的には『ザ・フライ』(1986)とか、『遊星からの物体X』(1982)とかも“入れたい”という気持ちもありましたが、ちょっとハマりませんでした。

ーー 確かにそれは面白いと思います。でも、子ども達も観るアニメーションでもありますもんね。私はドラキュラを発見しましたが、それ以外のキャラクターも登場していましたか。

マシュー監督:ありますよ。フランケンシュタインにドラキュラ、『悪魔のいけにえ』(1974)、『シャイニング』(1980)、それから後半の方なのですが、デヴィッド・クローネンバーグ 監督の名前をもじって、スペルを変えて「クロネンバーガー」という表記も入れたり。

ただ『ひつじのショーン』は子ども達も観る作品なので、分からないところがいっぱいあると思います。なのでそこはぽっかんとならないように、分からなくても楽しいと感じられるように意識しました。

2人の監督が力を合わせて生み出す、ストップモーションの世界

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ーー 今回、お二人で監督をされていますが、どのように仕事の分け方(担当分け)をされたのですか。

スティーブ監督:プリプロダクション(本番制作前の準備・試作段階を指す言葉)までは全部一緒にやる感じです。実際に絵コンテの作業に入る頃には、映画作家としては二人とも自分で全部やりたくなるんです。ですが凄く手の込んだセットメイキングの仕方なので、全部はとても出来ません。なので分担します。「ここがやりたい、ここがやりたい」と二人で言い合って戦うんです(笑)。いわゆるシーンを分けてお互いに担当する。そこから絵コンテを作って、撮影して、編集する。それぞれのパートをそれぞれがやる感じです。

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ーー 面白いですね。
スティーブ監督とマシュー監督、それぞれの得意分野を教えて下さい。

マシュー監督:私は2DとCGIのアニメから来ています。そして脚本、絵コンテをずっとやってきましたので、ちょっと背景が違います。何をおいても絵コンテが一番情熱を注いでいる部分です。

スティーブ監督:僕はバリバリのアニメーターから来ています。『ピングー』の脚本・監督・アニメーションを手がけました。なのでいい形で俯瞰し合えるんです。ストーリーに関してはマシュー監督、その他の現場の動きとかに関しては僕という感じです。

ーー 今回の『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』は何人で作り上げて、何年かかったのですか。

マシュー監督:スタッフは300人ぐらい、アニメーターは30名です。アイディア出しのところからいけば3年半で完パケまでかかっています。ですが、アニメ自体は10ヶ月で撮影しています。なのでこれまでのアードマン作品では1番早かったです。

世代を超えて愛されるキャラクターの秘密

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ーー さすがですね。アードマン・アニメーションズが大好きなんですが、今回の『ひつじのショーン』も台詞ではなく、動きによって全世界の子ども達に楽しさを分かち合うみたいなものを作り上げていると思いました。毎回、作品を作るうえで特に意識していることを教えて下さい。

マシュー監督:仰る通り小さな子ども達も観てくれるので、彼らがとにかく“楽しい”と思ってくれて、彼らが分かる物語であること。そして大人も観るので、大人が観てもたっぷりと楽しめるような要素を入れる。この両方を持ち合わせることを凄く意識しています。あととにかくキャラクターが大事!キャラクターが物語を引っぱっていきますから。なので状況から物語を作っていくことはしません。そこは凄く大事にしていて【ショーン】の良いところは、観客の皆さんは牧場主のことも群れのこともよく知っていますよね。なので何かが起きた時にどの様に彼らが反応するのか、皆さんは想像することが出来ると思うんです。だからこそ起きたことに彼がどんな感情を持ち反応をするのかを意識しながら物語を作っています。

ーー 子ども達に愛されるキャラクター作りで大切にしていることを教えて下さい。

マシュー監督:【ショーン】自体に子どもみたいなところがありませんか。登場する全員を含めて、ちょっと家族のような関係性なんです。牧場主がちょっと父親のようだし、長男が【ビッツァー】で自分より年下の子達とパパに挟まれているような感じで、中間管理職みたいなところがあります。群れの中でも【ショーン】は長男、お兄さんみたいな気持ちがあるから弟達をコントロールしなければならないみたいな気持ちがありながらも、本人もいたずらっ子ぽいところがあるんですよね。

【ショーン】シリーズでいうと凄く家族的な力学というのがポイントになっています。

ーー 子どもが共感しやすいような物語、構成にしているのですね。
子どもの目をひくキャラクターデザインは、どんなところを大事にして作り上げればいいのでしょうか。

スティーブ監督:やっぱり面白くて可笑しくて、魅力的であることです。あと大きな目がポイントです。
台詞がないだけに目で語る部分が凄く大きいんです。あとボディランゲージで語ることも非常に多いので、アードマン的にはちょっと柔らかさというか丸みのある、可愛くて目が大きいということをデザイン的には意識しています。

笑いのタイミングから表情まで、細部に宿るアードマンのこだわり

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ーー 私が特にアードマン・アニメーションズが面白いと思う理由が、笑いのテンポが優しいというかほんわかしているからです。その笑えるタイミング作りはどうやって研究し、物語を作り上げているのですか。

マシュー監督:アニメーターさんに渡す前に編集をするんです。アニマティクス、ビデオコンテみたいなものになります。脚本をベースにした絵コンテを動かすような形、絵コンテを繋いだようなものです。仮の音楽を付けたり声を入れたりするのですが、腕のいいエディターが僕らには居るので、その方がちょっとしたタイミングを調整してくれるんです。やはりコメディとして成立していないといけないし、いい形のペースというものを持っていないといけないので、それが“いいな”と思った時にアニメーターに渡します。そして、アニメーターが作ったものをまたこちら側で改めて調整したりします。

スティーブ監督:アニメーターさん達の参考の為と自分たちも参考にする為に、自分達がそのシーンを実際に演じて撮影してみます。その通りにやるわけではありませんが、表現が難しい身体の動きとか、表情などのガイドとして撮影します。

ーー 凄いですね。
『ウォレスとグルミット』を観ていても思いますが、表情が豊かで凄く変わります。その辺は人間ウォッチング(人間観察)をされているのですか。

スティーブ監督:もちろん。アニメーターあるあるなんですが、やっぱり色々な人の歩き方や表情などを常に観察してしまうところがあります。特に周りの人達、友人たちの仕草は、自然と吸収し、自分の中でライブラリーにして、必要な時にそれを使ったりします。そんなことを普通にしちゃっています。

マシュー監督:面白いのは動かされているキャラクターを観た時に「これ、○○(個人名)じゃない?」とバレてしまう時もあるんです。

手作りの魅力と、子どもたちに伝えたいアニメーションづくりの楽しさ

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ーー クレイ・アニメーションだからこそ出来る面白味や魅力を教えて下さい。

マシュー監督:やっぱり何といっても手で触れる感じが魅力だと思います。そのクラフトというところが、観る方々に伝わるんです。あとアードマンの哲学として指紋が残るような手作り感というのがあります。これがアニメーションというもの以上にアートとしての魅力を持っているのではないかと思います。

スティーブ監督:今、言ったこともその通りです。
それにクレイ・アニメーションは、ライブのパフォーマンスに似ているんです。CGだったら「あそこ変えよう」と言えば変えることが出来ますが、基本的にストップモーションというものは2~3日かけて、やっと数コマしか撮ることが出来ません。なかなか後から変えることはしません。それだけにライブパフォーマンスのように一回きりの、その時ならではの自然発生的なもの、火花みたいなものがすでに含まれているんです。それがとてもユニークなものだからこそ、あえて編集し直そう、撮り直そうとは思わないわけです。

ーー 最後に、子どもたちがクレイ・アニメーション(ストップモーション・アニメーションのうち、被写体の材料として主に粘土を用いて作成しているものを指す)を作ろうと思った時、最初に大事にすべきことは何ですか。

スティーブ監督:今は色々なアプリがあるので、是非探してみつつ、まずは描くことですね。実際に絵を描く、キャラクターを描いてみる。そして実際に粘土を手に入れて、その粘土を使って自分の手でキャラクターを作ってみて下さい。ビーズなどを使って、目をどのように表現するのか、どんな表情を作るのか、そのキャラクターらしい表情でなければいけないので、実際にやってみることが大事です。僕らの頃は今のようにアプリとかなかったので、SUPER 8のカメラやビデオで撮影を行っていました。当時は、一つ一つのフレームの質が悪くて大変でした。今はそうじゃないからいいですよね。大事なのは、物語とキャラクターなので本格的に物語を作りたいのであれば、その2つを意識して作るのがポイントです。

マシュー監督:レゴなどのアクションフィギュアを使って是非やってみて下さい。
なぜかというとアニメにした時のタイミング、動きというのを感覚的にそこで学ぶことが出来るからです。

映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!
2026年10月23日(金)全国公開
監督:スティーブ・コックス、マシュー・ウォーカー
脚本:マーク・バートン、ジャイルズ・ピルブロウ
原題:SHAUN THE SHEEP: THE BEAST OF MOSSY BOTTOM 
日本版特別声優:中村倫也、ガンバレルーヤ
配給:松竹
公式サイトURL:movies.shochiku.co.jp/shaun-kabocha/

伊藤さとり

映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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