いじめっ子はなぜ生まれる?『ライオン・キング:ムファサ』に学ぶ子育てで大切なこと
2024.12.29
超実写ってなに?
今、ディズニーアニメを超実写化した『ライオン・キング:ムファサ』が公開中です。
この超実写というのは、最新のフルCGで実写と見分けが付かないほどリアルな映像を実現した最新技術のことを指します。これは前作『ライオン・キング』(2019)の際に誕生した言葉ですが、今回の『ライオン・キング:ムファサ』では、雪山やホワイトライオンの登場など、美しさを際立たせた映像になっています。
実写が感情移入しやすい理由
でも何故、アニメではなくリアルにこだわるの?
これに対して言われるのが、「感情移入」という点です。アニメは非現実を楽しめる最高の手法ですが、より身近に出来事を見つめられる実写は、自分の日常と地続きの出来事として感情移入しやすい特性があります。だからこそ、超実写で再現されたアフリカのサバンナの広大さをスクリーンで堪能できる本作は、仔ライオンの大冒険を通して子ども達が自分ごととして物語を見つめる工夫がなされた映画だったのです。
子ども時代を描くことで自分の物語だと理解する
まず、「ライオン・キング」の物語はアニメやミュージカルとしてもお馴染み。特にミュージカルでは、シンバの仔ライオン時代を子どもが演じ、その結果、親子で観劇できる作品として愛され続けています。だからこそ、本作でもシンバの父親であるムファサの子ども時代からスタート。親とはぐれてしまったムファサがタカ(のちのスカー)と出会い、兄弟となって成長していく物語として展開していきます。
本当の家族とは
ここで描かれるのが、血の繋がりではない家族の姿。
けれど、“家族には血の繋がりなど関係ない”と分かりやすく描くのではなく、社会の厳しい見方も取り入れながら、諦めずに誰かが手を差し伸べ続けることで家族になっていくことを丁寧に綴っていくのも見事でした。そして偏見を持つライオンの姿を客観的に見つめることで、彼らが凝り固まった考えを持っていることに私達は気付かされます。
いじめっ子を作るのはなんなのか
そんな中で本作が、もうひとつ伝えようとしているのが“いじめっ子を作る構図”です。
本作では『ライオン・キング』の悪役で知られるスカーの幼少期から青年期を描くことで、どこで彼が道を誤ったのかが見えてきます。いったい彼がどんな感情を抱えながら育っていったのか、家庭環境、社会生活での状況、誰かと比較されるなど、様々なエピソードが映し出されていくことで、人間にも当てはまる物語だと感情移入していきます。しかしこれは子どもだけではなく、特に親に見てほしい題材でした。
つい、自分の子どもの未来を描こうとしてしまう私たち親。
でも本当の愛情とはなんなのか。まさに子どもの成長の過程でしてはいけないこと、大事にしたいことが詰まった映画『ライオン・キング:ムファサ』。彼らの想いが歌で綴られるミュージカル映画は、世代問わず共感する極上のエンタテインメントでもありました。
『ライオン・キング:ムファサ』
大ヒット公開中
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伊藤さとり
映画パーソナリティ/心理カウンセラー。映画コメンテーターとしてTVやラジオ、WEB番組で映画紹介。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当する。
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